「木っ端」からできた家具「KOPPA」。建築現場の廃材の中でも最も多いという、半端な長さの角材や板材を使って作られている。建物の一部になるために作られたのにごみになってしまう端材を活かせないかと、建築家の伊藤維さんの呼びかけで生まれた。
そんなKOPPAとワコムの出会いは、小さな偶然がきっかけだった。2019年7月、代表取締役兼CEOの井出信孝とテクニカルマーケティングチームのリタ・チェンは京都にあるmui Lab, Inc.の新しいオフィスを訪問した。そのオフィスを設計したのが伊藤さんだった。「京町家の構成を模したオフィスなんです」伊藤さんが語るコンセプトが印象的だった。
井出
muiのオフィスでお会いしたのをきっかけに、伊藤さんが参加する展覧会(※)に行ったんですよね。
※「Under 35 Architects exhibition 35歳以下の若手建築家による建築の展覧会」
リタ
いろいろな建築家の作品が紹介されていて、目立たない隅の方に本棚があったんです。
井出
そのときは作品なのかもわからなかったけれど、「これは使えるんじゃないか」と思ったんだよね。僕らの展示では、単にテクノロジーを見せるだけではなくて、ストーリーを見せることを大切にしていて、コンセプトがぴったりだなと。次の展示まで時間がなかったから、その場で「これ買えませんかね?」って話をしたんです。
会場にいたのは、伊藤さんと、企画担当の萌ちゃん(土中萌)、大工のしょーきちさん(野崎将太)。KOPPAにとっては初となる展覧会で、早くも次の展開が訪れることになった。それも、オリジナルのKOPPAとは形を変えた展示什器「旅するKOPPA」が生まれることになる。
井出
その時のしょーきちさんのインパクトがすごくて!「買えますか?」って話に、「自分、大工なんですけどっ!」って話が噛み合わなくて(笑)。それで伊藤さんを経由することになったんだけど、一言目に「できます」、それも「最適化できます」とおっしゃってくれて。
リタ
そのまま購入しようと思っていたのに、その言葉を聞いたら欲が出てきてしまった。奥行きがもっとほしいとか、スーツケースで移動するために軽くしてほしいとか、私たちの展示に合うようにいろいろお願いをしてしまいましたね。
伊藤
重量が一番のネックでしたね。スーツケースに入る大きさというのも大変でした。スケジュールも短くて……。でも、勢いで進めるところがあるチームだから、なんとかなるだろうと。ビジネスのためというよりは、どれだけ自分たちが楽しめるかというのがモチベーションになっています。制約や条件をいかに前向きな方向に解釈して楽しんでいけるかという。だから、「旅するKOPPA」も短納期かつ機動性という面白い条件に出会わせてもらったという感じがありました。
土中
自分たちが面白がって作ったものをよい方向に拡大解釈してくださって、それがすごく嬉しかったですね。展示後も細々と続けていけたらいいね、とチームで話していたのですが、もう次の展開きた!みたいな感じでした(笑)
野崎
もともとKOPPAは、楽しみながら、どう無駄をなくしていけるか、違和感を取り除いていけるかというところからスタートしているんです。実際に僕たちがごみを捨てずに活用してプロダクトに変換したという事実はあるけど、建築家と不動産屋と僕たち大工とバーテンダーが一緒に何かをしたということと、井出さんとお会いして、僕たちが普段出会わない会社とプロジェクトを開発したということがすごく面白かったです。
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Team KOPPA プロフィール
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伊藤維
建築家。伊藤維建築設計事務所代表。都市や建築から家具、インテリアまでシームレスに取り組みたいと、自身の活動の延長としてKOPPAを始めた。
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土中萌
設計事務所「Arts&Crafts」所属。KOPPAチームの企画担当。
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野崎将太
建築集団 「々」代表。大工でアーティスト。内装から芸術イベントの造作や設営まで、さまざまな作ることに携わる。
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上村一暁
「bar inspire」 店主。昼大工、夜バーテンダー。
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大木脩
合同会社生活工学研究所代表。生活の研究者。大工。
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