口の描き方

口の描き方についてご紹介します。

顔はイラスト制作の腕が問われる永遠のテーマです。このチュートルアルでは顔のパーツをひとつずつ取り上げており、今回は口の描き方について説明しています。

目や鼻に比べて、口は個性の違いを出しやすいパーツです。目や鼻の描き方はどれも似通っていることが多いですが、口は様々な描き方があります。顔の構造を見ても、口は動く範囲が広く、さまざまな形になります。感情を口で描き分ける方法は奥が深いテーマです。本格的な解説の場合、解剖学的な構造から説明しなければなりませんが、今回はいくつかの

角度やスタイルを例に口の描き方を紹介します。筆者が描き慣れた方法で説明していますが、ぜひ、描き方のスタイル模索のヒントに活用してください。

では始めましょう!

正面から見た口の描き方

口の位置

まず、口の位置取りから始めます。頭を描いたら、縦に補助線を入れます。この線がアタリを取るときの目安になります。鼻とあごの間を三等分する2本の線を入れ、上の線の位置に口を配置します。平均的な口の幅は、左右の目の瞳孔を結んだ線と同じ長さより、少し短くして描くと良いです。

口を描くには、シンプルに横線を描きましょう。口を描くには、シンプルに横線を描きましょう。上唇の下側を最初に描きます。この線を引くのが、口の形を決めるのに一番自然なやり方です。

次に、主線の中央付近にV字を描き入れます。くっきり入れても、省いても良いですが、ここではさりげなくV字を入れてみます。V字は下に向かって丸みをもたせます。

口角も描きます。口角で、口の表情が大きく変わります。

上唇は、平らな台形のラフを左右対称に描きます。

ラフを元に上唇の輪郭を、できるだけ品よく描きます。唇の膨らみに沿って口角からなだらかに線を引き、中心をV字にくぼませます。

最後に、下唇の平たい曲線を描き加えます。下唇は口角に向けつつも、繋げない方がよいでしょう。

その下にU字を逆向きに描き入れ、あごにします。あごのU字は、三等分の下側の線の位置に描きます。

口角のポイント

3パターンの口角を紹介します。上下に向きを変えたり、厚みの強弱をつけたりして、口角に変化をつけられます。口角が少し変わるだけで、顔の表情が大きく変わります。ちょっとした線ですが、表情の9割はこの線で決まります。思ったような表情を描けないときは、口角を工夫してみましょう。

上唇の描き方

上唇の形は、描きたい顔によって、好きなよう変化させることができます。上唇が薄いと男性的な印象になり、V字の切り込みが浅いと女性的な印象になります。もちろん、女性の唇がいつも男性の唇より厚いわけではないので、鉄則ではありません。

唇のV字と下唇の描き方

唇の間に入れるV字も、色々な描き方があります。くっきりしたり、なだらかに描いたり、半円形にすることもあります。

下唇の描き方にもバリエーションがあります。U字の底が長く平らにし、中央に向けて少し盛り上げる描き方もあります(3番目の例)。

このような変化のつけ方を知っていると、描き分けのスキルとアイデアの引き出しが増えます。

開いた口の描き方

次に開いた口を描いてみます。いくつかのポイントがあります。

口が大きく開かれるほど、口の幅は狭くなり唇も薄くなります。上唇のV字も浅くなります。

歯の境目を描き込みすぎると歯だけが浮いてしまうので、歯をひとかたまりに描くとよいでしょう。どうしても歯の形を1本1本描き込みたいという場合は、歯の境目の線はできるだけ細くします。

よほど大きく口を開けない限り、普通は下の歯は見えません。舌を描いても良いですが、影をつけるだけで口の内の感じは十分に出せます。

横顔や色々な角度の口を描く

横顔の口を描く

まず主線から描き始めます。この主線は上唇の下側で、口角につながっています。主線は下がり気味に描きましょう。パッと見ると悲しそうな顔に見えるかもしれませんが、心配ありません。最終的な表情を決めるのは口角です。

例のように、横顔の上唇は大きく前に傾いた台形をしており、顔の楕円から突き出すように描きます。

下唇は、上唇と接する長方形を描きます。下唇の端から二本の線を平行に入れます。一本目は口角から引き、二本目は上唇から引きます。例のように先の端よりも少し手前の位置から描き始めると良いです。

続けて、下唇の長方形を整えます。上唇ほど突き出さないように描き入れます。

最後に上唇と鼻、下唇と顎をつなげれば完成です。

様々なバリエーション

この描き方は自由度が高く、様々な応用が利きます。どんな形や角度にするか、線の端を硬くするか柔らかくするか、線を内側外側に曲げるか、S字にくねらせるかなど、いくらでも自由に描くことができます。

上唇の両端のV字を描いてもよいでしょう。横顔の場合は、口角から引いてきた主線が上唇のV字の線と重なるように描きます(右下の例)。

視点で変わる口の形や角度

口を描くときは、必ず主線から始めます。主線を基準に、他の部位が決まります。頭の丸みに沿って、上向きの顔なら主線を上向きに、下向きの顔なら下向きに曲線を描きます。

顔の向きによって唇の角度も変わります。唇の幅が広くなったり、狭くなったりします。深くうつむいたときは上唇は見えなくなり、頭を上や下に傾けると下唇と顎の間隔か狭く見えます。

唇に影を入れる(マンガ風)

影を入れる

唇に影を付けていきます。正面から見た口は、影が入れやすいです。デジタルで描く場合は、レイヤーを分けて描きましょう。

まず、唇全体をグレーに塗りつぶします。

主線に沿って影を入れます。影は唇のグレーよりも少し暗くしますが、主線よりは薄い色を使います。唇の形に沿うように、主線の上下に影を入れます。下の影はなだらかなU字型で、上の影は唇と同じV字に描き入れます。

光を入れる

唇で最も明るくなる部分はどこでしょうか。それは上唇の上端と、下唇の影の下の部分です。唇の光沢感を出すため、明るくなる部分にはエッジを利かせた白で描き入れます。

白の部分に数本の線を入れて、テクスチャを加えます。白を入れた部分に消しゴム機能でさっと消すようにするのが簡単です。太陽から光が射し込むイメージで、両唇の境にある主線から、上下に放射状に線を入れます。

デフォルメした大胆なやり方ですが、少し練習すれば、効果的に影を入れられるようになります。別の角度の場合でも、簡単に応用できます。次はリアルな作風の影の付け方を見てみましょう。

唇に影を入れる(リアル風)

リアルに唇を描く場合

唇には細かい縦じわがあります。例のように、少し弓なりの細い線をたくさん描き入れることで、この縦じわを表現します。ブラシの不透明度を30%程度に下げ、サッと細かい線を描き込むとよいでしょう。線が唇からはみ出してしまっても、後にまとめて消せば大丈夫です。左から中央に向かって線を入れます。中央まで描き込んだら、画像を回転させると、曲線を最後までスムーズに描き進められます。

次に白い線で同じ作業を繰り返します。これも別のレイヤーに描きましょう。

主線に細かく描き込みをする

主線に細かいU字を重ねることで、唇のひだを表現できます。U字の幅や傾き、長さにばらつきを出しましょう。U字の先端は筆を抜くように描きます。縦じわの角度に合わせるように、口角に近づくにつれU字の角度も横に寝かせるようになります。U字の底は、必ず主線と重なるようにします。

細部の微調整

不要なレイヤーは非表示にし、各手順で使用した個々のレイヤーを使って説明します。一番左の例は、これまで描いてきた内容がすべて表示されています。ステップごとにレイヤーを分ければ、仕上げを柔軟に行うことができます。

まずは、全体の印象を整えるため、各レイヤーの不透明度を下げます(左から二番目の例)。細かい線が描かれたレイヤーの不透明度を下げると、線の印象が柔らかくなります。

左から3番目の例では、さらに細かい微調整をしました。描き込み過ぎた箇所は、柔らかい消しゴムで慎重に消します。ここでは、上唇の上端に入った黒い線を薄くし、下唇の縦じわはさやえんどうのような形にして残しました。

唇の端がまだ少し硬く見えるので、グレーに塗った面の外側を軽くぼかします。

リアルな唇の影

唇の奥行きを出す影を付けます。マンガ風の口と同じやり方で、影の縁をぼかします。主線の下に黒に近い濃い影を入れます。

唇に明るい箇所をつけ足します。上唇の上端と、下唇の濃い影の下を明るくします。必ずしもこの通りに描く必要はないので、どの部分に光が当たるかを考えて工夫してみましょう。

唇に光沢をつける

最後に、光沢を描き込みます。新しいレイヤーを使えば、あとで自由に修正できます。ここでは、上唇の上端のV字をグロスのように際立たせました。

口の描き方は様々ですので、いつもここまで細かく描き込む必要はありません。自由に決めることができます。

本チュートリアルでは、口の描き方を説明しました。少しでも皆さんのイラスト制作のヒントになれば幸いです。

今後も、チュートリアルをお楽しみください。

顔の表情の決め手となる口をWacom Oneで描いてみよう。

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