問い続けることの意味とは?創造的混沌とは?コネクテッド・インクとは?
コネクテッド・インクの受け止め方は、ワコムのチームメンバーにとってもさまざまです。それぞれが考えるものがコネクテッド・インクという多面体の一面を構成しているのだと代表取締役社長兼CEOの井出は言います。実際にどのような側面があるのでしょうか。ここでは、チームメンバーの心の灯りを起点にその一面を覗いてみます。
二人目は、ハイジ・ワンと共にコネクテッド・インクの立ち上げから企画運営を担っている桧森陽平です。Corporate Engagement担当として、さまざまなコーポレートイベントに包括的に携わる桧森が考えるコネクテッド・インクとは?
※「コネクテッド・インク」は、2016年よりワコムが主催する、アート、人間表現、学び、そしてそれらを支えるテクノロジーの新しい方向性を、ある問いから模索するイベントです。
コネクテッド・インクはどのように始まったのですか?
桧森:2016年1月、CES(Consumer Electronics Show)で製品展示を行うのと同時に、世界中の人たちにデジタルインクについて知ってもらおうと、ミニイベントとして開催したのが最初のコネクテッド・インクです。2017年までは、CESやIFA(国際コンシューマー・エレクトロニクス展)といった国際見本市に合わせて、年に数回開催していました。
その後いくつかの変遷をたどり、現在のコネクテッド・インクになったのですね。
桧森:初年度のコネクテッド・インクは、規模もそうですが、参加者も限られていて、内容も同じものの繰り返しが多く、このままではよくないと思ったんです。会社のイベントとして、長期的に意味あるものにしていくには、コンテンツの発展性や新規性も重要だと思いました。一年をかけて、どうすればコネクテッド・インクが会社のエネルギーを集中できるイベントになるかを考え、提案しました。そうして迎えたのが2018年のコネクテッド・インクです。開催地を東京に絞り、パートナーが一堂に会する場を作りました。2019年も同様の形で開催し、2020年に再び転換期を迎えることになります。井出さんいわく、アイデアが突然降りてきて、創造的混沌という世界観が大きな要素として加わりました。同時に、コロナウィルスの感染拡大という状況からオンラインでの配信を試みるなど、イベントの形にも大きな変化があり、現在に至ります。
想像を超える変化があったのですね。
桧森:そうですね。2019年までのコネクテッド・インクは簡単に説明できるのですが、それ以降のコネクテッド・インクは簡単には説明できなくて。昔の自分では目指しえないものがどんどん現れて、重なり合っています。年一回のイベントを通して自分が過去に目指していたものは、定義することが簡単すぎるくらい簡単なイベントだったと思います。でも、もしコネクテッド・インクが今の姿になるために自分がやってきたその過程があるのならば、やってよかったなと思います。
創造的混沌についてはどのように考えますか?
桧森:創造的混沌という言葉を使っているだけだと思っています。コネクテッド・インクでは、いろいろなものが自由に発信され、さまざまな人が交差して、多義的なものが生まれています。それをそれぞれの人が感じて、解釈して、時には悩んだり、迷ったりする人もいるのですが、そういった状況を含めて、創造的混沌という言葉で表しているのかなと思います。
チームメンバー(社員)やパートナー、コミュニティの反応は?
桧森:コネクテッド・インクの無限の包容力が認識され始めたという感覚があります。この場を活用しようとか、ひとつの目標にしようとか、それぞれの思いを包容できる場だと感じて関わってくれる方が増えていると思います。また、それが創造的混沌の強度を増幅していると思います。
コネクテッド・インクの包容力とは?
桧森:包容力というのか、吸収力というのか。定義が難しいのですが、何をやってもよくて、いろいろなことが起こっていて、それぞれが自由に感じているんですね。自分の好きなことを感じることが許されている空間ということかと思います。
コネクテッド・インクにとっての問いとはどういうものなのでしょうか?
桧森:問いに対しては、井出さんの強い想いがあると思うのですが、私自身も少しずつ理解しているところです。それぞれの価値観や好みなどが違うなかで、イベントの内容を定義しても、当てはまらない人が出てくると思います。でも、何かについて一緒に考えてみようということはできると思っています。そこから出てくる答えはみんなバラバラなのだけれど、一緒に考えることによって、ふっと同じ結界の中に入ることができるような。そのために問いがあって、問いかけに対する反応があるのではないかと思います。コネクテッド・インクで投げかけられる問いについて結論を出すことももちろんできるのですが、人それぞれの答えがあるはずですし、違ってよいはずです。ほんの一瞬でよいから、一緒に考えようということなのではないかと思っています。
自身にとってコネクテッド・インクとは?
桧森:大げさかもしれないのですが、コネクテッド・インクがあれば、やりがいを持って生きていける、かな。コネクテッド・インクがある限りは会社を辞めてはならないなって思うんです。あとは、自分の働きかけも含めて、コネクテッド・インクが今の姿になっているのだとしたら、価値を減じさせるようなことを招いてはいけないと思っています。例えば、法的な不備が生じてしまうとか、チームメンバーの中で意欲喪失が起きてしまうとか、コネクテッド・インクが何かわるいことに利用されてしまうとか。せっかく何と言ってよいのかわからないくらいになったコネクテッド・インクをそんなことでだめにはしたくなくて。それを一番下で自分が支えていられたらなという思いでやっています。