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余韻の中に残るもの/
コネクテッド・インク2021

 


アート、人間表現、学び、そしてそれらを支えるテクノロジーの新しい方向性を模索するイベント「コネクテッド・インク」。

創造的混沌とは何なのか。コネクテッド・インク2020から続くこの問いの答えを模索するまま、コネクテッド・インク2021は「創造的混沌から何が生まれるのか?」という新たな問いかけと共に幕を開けました。さらにテーマとして示されたのは「宇宙」。ここでは、当日行われた70近いセッションの中からオープニングとフィナーレを振り返り、コネクテッド・インク2021がもたらしたものについて考えてみます。


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オープニング:https://youtu.be/jMz8dWoVGvY (コネクテッド・インク YouTubeチャンネル)



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フィナーレ:https://youtu.be/P8RM0hlcQs8 (コネクテッド・インク YouTubeチャンネル)



物質と反物質
宇宙に存在する星や生命は、粒子によって構成された物質でできています。物質の最小単位は素粒子で、一般的に粒子と反粒子は対になって存在し、これらが出会うと打ち消し合って消滅するといわれます。反物質とは、反粒子によって構成されたものです。約138億年前、宇宙の始まりと言われるビッグバンが起きた時にはほぼ同じ数だけ存在していた物質と反物質ですが、なぜか反物質だけ消滅してしまいました。この物質と反物質のぶつかり合いや宇宙と人間との関係性を表現のひとつに取り込んだのがIMPALAとNORAによるパフォーマンスです。

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宇宙の音

オープニングとフィナーレの重要な鍵として登場する宇宙の音は、科学者と芸術家による宇宙サウンドチームにより作り出されました。宇宙からは常にさまざまな素粒子が降り注ぎ、私たちの身体を通り抜けて存在しています。その素粒子のひとつ、宇宙線ミューオンを風鈴とつなぎ、ほぼリアルタイムに受信する宇宙からの信号を音に変換して表現したのが宇宙の音です。さらに、宇宙にある太陽を観測する人工衛星からも信号を拾い、太陽風の音も奏でることで音楽性が増幅されています。

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時空の直結

宇宙の音は、ある場面から別の場面へと時空を直結させる合図でもありました。オープニングでは、風鈴を合図に、るんびにい美術館(岩手県花巻市)のアーティスト、小林覚さんの映像が映し出されます。いつも通りに筆を走らせる小林覚さんが描くのは、「われらは新たな美を創る」。宮沢賢治の『農民芸術概論綱要』にある一節です。るんびにい美術館のアートディレクター、板垣崇志氏は「コネクテッド・インクにふさわしいのではないかという言葉」だと添えました。そうして描かれた作品は、ユニバーサルアートというWEBアプリを使って東京・新宿から西の夜空へと飛んでいきます。

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それぞれの宇宙

フィナーレでは、宇宙の音を合図に、LIMITS形式のライブドローイングが始まります。犬楽氏、FF00FF-ink (マゼンタインク)氏が描くのは、それぞれ宇宙とデジタル、宇宙と創造。同じステージでは、さざ波のような宇宙の音に重なって、日本フィルハーモニー交響楽団が「惑星」を奏でます。IMPALAとNORAのパフォーマンスも加わり、会場にいる人々も気がつけばステージから起こる渦の中に。ふと天井を見上げると、27時間の旅から帰ってきた作品があります。再び宇宙の音を合図に、場面は小林覚さんへと切り替わります。窓辺の風鈴と佇む小林覚さん。コネクテッド・インク2021はこうして静かに幕を閉じました。


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創造的混沌から何が生まれるのか?
その答えはあったのでしょうか。なかったのでしょうか。コネクテッド・インク2021をどう受け止めるかはきっとそれぞれ異なるのではないかと思います。

いまだ謎に満ちた宇宙を、「人間のすべての創造はそこから生まれる」のだと井出は語ります。その宇宙をテーマに、絵、音楽、踊り、歌、映像など、それぞれの表現者たちがそれぞれの世界を表現したコネクテッド・インク2021。解釈の余地とするには大きすぎるものであったかもしれません。けれど、その余韻の中に残る何かが、創造的混沌を問い続ける意味を教えてくれるのではないかとワコムは考えています。







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