ポータビリティを極めるアクセサリー類のあり方
「軽く」かつ「強く」を実現するため、Wacom Movink 13の外装にはマグネシウム合金を採用。ワコムではこれまで外装パーツにこの素材を使ったことはない。高級感のある手触りと落ち着いた雰囲気のある外観にも、マグネシウム合金の素材感が一役買った。常に持ち歩き、手に触れるものだからこそ、指紋が目立ちにくい加工も施されるなど、細部に至るまでこだわりが光る。一つひとつの構成要素において「極限まで攻める」ことで、結果的に当初思い描いていた以上の「薄く」「軽く」「強く」が実現されたことがよくわかる外観だ。
また、ポータブルであるが故に、アクセサリー類へのこだわりも並々ならぬものがあった。好みの角度に調節できる折りたたみ式のスタンド、ディスプレイのガラス面を守るスリーブ、デジタルペンの保護ケースなど、Wacom Movink 13を持ち歩くクリエイターが必要とするアクセサリーは、すべてゼロからの開発だ。
「たとえば、このロールアップ式のペンケース。付属のWacom Pro Pen 3をはじめ、デジタルペンのペン先 は外からの衝撃を嫌います。ポータブルで使用するシーンでは、バッグのなかで思わぬダメージを受けてしまうかもしれない。ペン先 を守るという発想はポータブルならでは(前田)」
どんな場所でも最高のパフォーマンスを発揮できるよう、最も力を入れたアクセサリーがFoldable Standだった。このスタンドにWacom Movink 13を乗せるとデスクに対して20度の角度が保たれ、クリエイターにとっての最適な創作環境がいつでもどこでも一瞬で整う。このスタンドは開発期間が極端に短かったため、通常の製品開発であれば企画段階で出てくるような課題が、実際の製造工程で現れることもあった。創作の観点から言えば、使用時のガタつきが出ないようにすることが最も重要。それを実現するには部品加工や組み立てに高い精度が求められる。
「単純な構造に見えて、実はかなりの技術が使われているんです」と長瀬が話すように、強度を担保しつつ、ポータブルデバイスに適した軽量化を図っている。開閉時に必要な力加減にも気を使った。軽すぎず、重すぎず、適切な力で、好みの幅に広げられること。フリーストップのメリットが最も発揮できる力加減を探っていった。前田も、「本当に細かい部分にまでこだわってつくったので、使えば使うほどクリエイターにとっては『かゆいところに手が届く感覚』が味わえると思います。限られた時間のなかで、クリエイターの立場になってあるべき姿を微に入り細に入り、徹底して考えました。このスタンドのことなら、一日中話していられるくらいの苦労がありましたね」と、開発当時を振り返る。