ペンはキーボードよりも強し ― 紙に書く効用
テクノロジーの時代にあって、紙とペンを使ったメモ取りは時代に逆行するように思えるかしれません。しかし、講義でも重要な社内会議でも、手書きでメモするほうがキーボード入力よりも、明らかに効果が高いというエビデンスが続々と報告されています。
2014年、プリンストン大学とUCLAが行った共同研究に基づいて、論文「ペンはキーボードよりも強し:ノートテイキングにおけるパソコンに比較した手書きのメリット(The pen is mightier than the keyboard: advantages of longhand over laptop note-taking)」が発表されました。そのなかで、パム・A・ミュラーとダニエル・M・オッペンハイマーという二人の研究者は、それまでの常識を覆すような研究結果を明らかにしています。二人は327人を対象にノートの手書きとキーボード入力を比較する実験を行いました。その結果、その結果、従来の方法でノートを手書きしたグループの方が、キーボード入力したグループより、その後のテストでよい成績を収めました。
キーボード入力だと記録する情報量は多くなりますが、言われたことをそのままタイプしがちなので、テストの出来が悪いのではないか、というのが研究者たちの分析です。
一字一句すべてをタイプするときには、自分で考えて概念をまとめる余裕はありません。それに対して手書きのメモであると、キーワードだけを書き留め、記号やイラストを書き込むことで、不要な情報を省いたエッセンスだけを抽出できます。結果として内容が整理され、頭に入りやすくなります。
その2年後、ノルウェーのトロンへイム大学(現ノルウェー科学技術大学)のオードリーとルート(ファン・デル・ヴィール)が同様の実験を行いました。学生に手書きとパソコン入力でノートを取らせて脳活動を調べるという実験でしたが、そこでも紙にペンで手書きするほうが脳の活動が活発になることが分かりました。タイプだと脳が「怠ける」のに対して、ペンで手書きするときは「書こう」とする内容に思いをめぐらし、単なる書き取り以上に頭を使うからであると、ルート・ファン・デル・ヴィールはその理由を説明しています。
ノートパソコンでメモ取りすると、気が散ります。ワープロソフトやメール、ウェブブラウザにもつい手が伸びがちです。講義や会議の大半をSNSのチェックに費やすことにもなりかねません。ネット接続を切ったとしても、キーボード入力によるメモ取りの学習効果は高まらないことが実証されています。パソコンでメモ取りが、心理的に邪魔をして自由な発想の展開が妨げられるという研究もあります。特に、チームワークの必要な職場では、顕著だといいます。作業効率を高め、創造性を働かせるには、やはり昔ながらのペンと紙に勝る道具はありません。
それでも、手書きのメモ取りだけに飽き足らない人たちに、さらなるメリットを提供するテクノロジーがあります。講義や会議の後に忙しくてメモをいちいち入力していられない学生や会社員のみなさんに、手書きメモを整理しデジタル化する、デジタルノートパッドがおすすめです。Bamboo InkやBamboo Ink Plus といったスタイラスペンなら、手書きノートを簡単にデジタル化。アプリWacom Inkspace*の Ink to Text 機能は、文字を認識しリッチテキストやDOCファイルとして保存します。デジタルデータは保存やバックアップも簡単。後から見直したり、職場の仲間と共有するのに便利です。
研究により明らかになったのは、メモ帳にペンで書き込むときは、話し合いの内容を吟味する思考パターン(クリティカルシンキング)が作用するということ。それに対し、キーボード入力だと耳にしたことをそのままタイプするだけで、内容は頭を素通りしがちです。デジタルパッドに手書き文字のテキスト化ツールを組み合わせることでパワーアップした手書きメモは、今後も授業や会議で活躍し続けることでしょう。